夏大直前!これだけはやっておくといい応援ルール9つのこと
さて、今週末から高校野球の沖縄大会や北海道大会が始まり、今年で98回目を数える”夏”がいよいよやってきます。
そんな高校野球の風物詩と言えば、「応援」です。
グラウンド上で繰り広げられる選手同士の闘いがメインではあるものの、スタンドで選手をサポートするブラスバンドの演奏に注目する人もいれば、そうしたブラスバンドの音色と控え部員や生徒の声援、そしてグラウンドの選手とが一体となった宇宙空間を肌で感じて快感を得るファンもいます。
つまり、スポーツ(ここでは野球)と応援は密接に結びついているものだと言うことができます。
利他主義である「応援」
そもそも、自分ではない誰かを応援することにどんな意味があるのか。
心理学的観点から言えば、選手にとっては「周囲から注目されている」快感や「活躍することで賞賛が得られる」という達成目標、応援する側にとっては「他の応援者と一体になれる」達成感などがよく言われ、モチベーションの向上には欠かせないものとも言えます。
また、応援をする意義について、本郷学園の応援委員会(以下の記事を参照)は次のようにとらえています。
本来、応援の精神とは利他主義が本懐であり、それはボランティア精神です。自分自身のことではなく、がんばろうとする他者を支援すること
とりわけ高校野球の応援であれば、母校であり、同じ校舎や教室で学校生活をともにする身近な仲間が応援対象になるわけです。
その選手が普段から頑張っている姿を見ていたら、なおさら自然と応援意欲も湧いてくるでしょう。
応援者の心を一つにまとめる「応援団」
また、本郷学園では「応援委員会」が常設されており、そういった応援団(応援部や応援指導部など一括して「応援団」と呼ぶこととする)の意義についても言及しています。
頑張る人を支援したい、と思う人々の心をリードし、一つにまとめ、大きな力へと換えて送り届けること。これが今も昔も変わらない、『応援団』の存在意義であるはずです。そのためには、頑張る対象者の気持ち、応援しようと思っている人々の気持ちを汲み取り、皆さんが望んでいることに応えられる存在でなければなりません
明治時代に起源を持つ応援団は、早慶戦によりその応援スタイルを確立し、1947年には東京六大学応援団連盟が結成され、現在まで六大学の影響を色濃く受けながらさまざまな応援組織が結成されてきました。
「応援団」の衰退と基本ルールの欠如
しかし、夏場でも学ランを着て、濁声を響かせながら毅然とした風格を持つ男臭さは、今の時代の生徒や学生に敬遠されがちで、応援団は衰退の一途を辿っています。
日本の応援組織として最古の歴史を持つ東京六大学でさえ、リーダー部の部員不足に悲鳴をあげているとも聞きます。
私が住む千葉県では、常設の応援団があるのは片手で数えるくらいしかありません(応援リーダーが学ランを着て~というような昔ながらの応援団は0?)。東京六大学の付属校がないこと、男子校がないことなどが要因でしょうか。
そのためか、千葉県には秋春の県大会でブラスバンドを動員するという文化がありません。
たとえば、埼玉県であれば、埼玉県六校応援団連盟の学校を中心に、秋春の県大会であってもブラスバンドが応援に駆けつけるというのは良くある光景です。
最近では、千葉県でも千葉黎明高校が学校全体の取り組みとして秋春の県大会においてブラスバンド動員を行っていますが、ほとんどの学校は応援に関して夏がぶっつけ本番になるわけです。
だから、エール交換を知らない学校が多いのです。
これはマナーが良いとか悪いとかの問題ではありません。知らないのだから仕方ないのです。
だけど、観ている人たちや対戦校は「知らないから仕方ない」とはなりません。
「こっちはエールをやったのに返ってこない」と知らないうちに印象を悪くしてしまうこともあります。
そうしたことも踏まえて、応援がお互いにとって不利益にならないようにするには、お互いが気持ちよく試合を行うためには、急造の応援団であっても最低限のルールは知っておくべきなのです。
規定されている基本的な応援ルール
まずは、高校野球千葉大会の選手名簿に掲載されている応援のルールをさらっとおさらいしてみます。
使用禁止
- 鉦、和太鼓、演台、音響装置、ハンドマイク(笛は規律を守るためならOK)
- 選手個人名の垂れ幕やのぼり、宣伝と見なされる旗や横幕、PR、ビラ配布(許可なし)
- 光を反射してプレーに支障をきたすもの、スタンドにゴミとなって残るもの、大きな飾り物
応援の仕方
- 自チームの攻撃の時にだけブラバン演奏
- 相手攻撃の際は、拍手や声で励ますのがマナー
つまり、社会人野球を応援の参考にしてまんまやったらアウトというわけです。
笛の使用に関しては、県立船橋高校が曲の入れ替え時に使用していました。
これだけは実践してみよう9つのこと
応援の基本ルールを確認したところで、+「これをやればお互い気持ちよく応援できるよ」というのをいくつか紹介していきます。
相手校の応援団(応援リーダー)と打ち合わせ
これができてればエール交換もスムーズに行くはずです。主な打ち合わせ内容は以下の通り。
- エール交換の順番の確認(普通は、試合前:先攻チームが先、試合後:勝利チームが先)
- エール交換のタイミングの確認(試合前か初回か、校歌は演奏するのか)
- 校名呼称の確認(その学校独自の略称を確認)
- エール交換様式の確認(学校によっては自チームへのエールがなかったりする)
近年の千葉大会では、アナウンス前の演奏が禁止?になったようで、初回エール交換前の校歌演奏を規制された学校も多いようです。
それならば、お互い打ち合わせして試合前に校歌付きのエール交換があっても良いかもしれません。
④も意外と大事で、学校によってはエール交換で独自のスタイルがあることも考えられます。
基本的には「自チームエール→相手チームエール」の順番だけど、「相手チームエール→自チームエール」と順番が逆であったり、そもそも自チームへのエールが無く「相手チームエール」のみであったり、その時に戸惑わないように事前に確認しておきましょう。
打ち合わせ内容含めエール交換のルールを周知徹底
エール交換はいつどちらからやるのか、呼称はなにかを応援席にいる控え部員や一般生徒などに広報しておくことも必要ですね。
エール交換の基本的な流れとしては以下の通りですが、こういった流れは球場に来る前にも確認できるはずです。
1 応援団挨拶
2 校歌斉唱
3 自チームへのエール
4 相手チームへのエール
エール交換の際は立ち上がって帽子を取って厳粛に
面倒だ!と思われるかもしれませんが、このちょっとした工夫で印象はまるで違います。
エール交換中に打者がヒットを打ったかなんかで歓声を上げる人がいますが、エール交換中は私語厳禁で厳粛に行うことが一つのマナーでもあります。
たとえば、栃木の佐野日大高校が甲子園出場した際は、応援マニュアルに「エール時は私語厳禁」と明記されていたとか。
これは応援席にいるすべての人が徹底すべき事項ですから、応援団はしっかりとした呼びかけが必要です。
相手選手が負傷したり審判が協議しているときは演奏を止める
こういう時の演奏を止めるか止めないかの判断って結構難しいですけど、相手選手が怪我した時に演奏を止めるのは相手校への配慮であり、審判協議中に演奏を止めるのは審判への配慮はもちろん審判の説明を待つ観客への配慮でもあります。
負傷した相手選手がグラウンドに戻ってきたときに拍手を送るのも素敵ですよね。
昨夏の千葉大会、長狭対西武台千葉戦では、長狭高校の早戸投手が負傷してベンチで治療を受けていた場面で、対戦校の西武台千葉高校スタンドから「早戸」コールが起こりました。
意図はどうあれ、お互いの応援者のみならず、見ていた人すべてが清々しくなる粋な計らいでした。
守備(劣勢)時の拍手や声援
一般的に、「応援は攻撃時にするもの」と考えられがちですが、実は一番応援しなきゃいけない場面って自チームの守備がピンチを迎えているときなんです。
応援の基本的なルールを前述しましたが、そこにも「相手攻撃の際は、拍手や声で励ますのがマナー」ってありますよね。ルール的にはOK!
グラウンドの選手たちはピンチが一番苦しいときなんです。それをサポートできるのは、救えるのは、応援席のあなたたちですよ。
特に千葉県は、伝令で守備がマウンドに集まったときに演奏を止める学校が多いので、そのシーンとなるときがチャンスです。
相手の応援団がくれた空白の時間に声援を送ってあげましょう。ピンチがチャンスに変わるかも?
全校応援(学年応援)の時は、野球部員をブロックごとに配置
これは野球部員でなくても、応援のノウハウがわかる生徒が一般生徒のお手本となるように間隔を空けて配置することは応援格差を生まない一つの工夫でもあります。
全校応援ともなればメガホンを叩くだけの生徒もでてきますし、応援のかけ声も曖昧な生徒が多いはずです。
そうすると必然と応援に無関心なブロックができてしまいます。
一体感という名の宇宙空間を作り出すためには、そういったブロックを一つでも減らすことです。
応援って一人の「バカ」がいると自分も乗っていけるもので、そういう「バカ」を野球部員が演じられれば理想的な応援の姿に近づけるのではないでしょうか。
学ランを着た応援団員がスタンドを回りながら応援者を鼓舞する光景を見ればイメージしやすいでしょう。
試合後のスタンドの後始末
スタンドにゴミを残さないこと!シンプルです。
相手守備がマウンドに集まっただけで演奏を止めない
もはや説明不要。
「ウチの名物はこれ!」と言えるような応援(曲)
その学校にしかないアイデンティティを模索することです。
それは紅陵高校のように30曲以上のオリジナル曲を作らなくても、習志野高校のように200人体制で爆音を響かせなくてもできることです。
たとえば、その学校のOB・OGが歌っている曲とか、クラシックでもアニソンでもゲームのBGMでも、他が使ってない曲を選曲するのもよし、他が使っている曲でも独自にアレンジするのもよし、吹奏楽部が普段コンサートで演奏している曲を野球応援風にアレンジするのもよし、とにかく、「○○高校と言えばこの応援だよね」と周囲100人が100人とも同じ認識になるような応援が理想です。
そういった独自性のある応援は応援席が一つになれるし、お客さんも「ここの応援が聞きたい」と味方してくれるはずです。
おわりに
日本の野球応援の発祥とも言える東京六大学で、なぜこのような応援文化が確立したか。
かつて早慶戦では、観客が怒鳴ったり野次を飛ばしたりするような無秩序な応援により試合が中止に至る、あるいは「リンゴ事件」などの大騒動を引き起こすことが多かった。
そうした苦い経験から、「味方を熱烈に応援しながらも決して相手を貶めず尊敬を忘れない応援姿勢」という考えが生まれました。
相手に敬意を表す一つの形がエール交換でもあります。
ぜひ、相手への敬意を忘れず、自分たちの自慢の応援を見せて下さい。
応援団は応援者の心を一つにまとめ、規律を保つために重要な役割を果たします。
応援席を一体にしようとする応援団の努力は、昨年夏の松山高校のような感動的な応援を生み出すことにも繋がります。
この夏も、すべての「応援団」を応援しています。